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願いを<5>

ガブラスの目が覚めて、少し後のお話。


その答えはきっと皆違うと思う。

「生きる」って、なんだろう。











ずれにずれ込んだ終業時間を漸く迎えて、
夜の闇深い窓の外を横目に自室へ急ぐ。

装備を手早く外したバッシュは大きく伸びをして凝った全身の筋肉を解すと寝室へ向かった。

全く、毎日この重装備を纏って動き回っているのだから成程公安総局とは大したものだと本気で感心する。

土地柄、軽装が基本だったバッシュにとって帝国の装備は一々が大仰で重たかった。

ダルマスカでこんな装備で歩いたら瞬く間に足が砂に埋もれて動けなくなるのが精々だろう。


鼻先まで毛布に潜って昏々と眠る弟の姿に目を細め、
ヘッドボードに置かれた医師からのメモに目を通して安堵の吐息を吐く。

処方された薬の量が少し増えた。
それはつまりそれだけの量に耐えられる様になったと言う事だ。

これを繰り返してポーションに手が届く様になったら一安心だがそれがいつの事なのか誰にも分からない。

夕餉に出された食事の半分以上に手をつけなかったらしい。

咎める様に同じ色同じ長さの髪をくしゃりと撫でる。

眠りが浅くなったのか、ノアは少し眉を寄せるとバッシュの手から逃れる様に長身を丸めた。


少し前にもこうして弟の髪を撫でた。

あの時は口論とまではいかないが軽い言い合いをした後だった。

その事を何気なく話したらドレイスには嫌な顔をされるしザルガバースには病人相手に、と咎められるしで余り良い評価は貰えなかったが、
兄弟喧嘩なぞ放っておけと笑い飛ばしてくれたベルガやギースに帝国にきちんと弟の居場所があった事を感じて安心をした。


それは昼休憩の時だった。

さっさと食事を摂って余った時間を弟の居る寝室で過ごすバッシュに、
ぽつりとノアは口を開いた。


「何故助けた。」
「何が?」

バッシュの間の抜けた声にノアは眉根を刻む。

髪を短く刈ったバッシュの姿は額の傷以外ノアと変わらない。

否。
病床のノアは痩せたままだったから結局体格だけは違った。

今のバッシュは、前のノアだ。


ベッドの上で身を起こしたノアは手助けをしようとしたバッシュを手で制して深い息を吐いた。

昨日、体調が良いからと部屋にあった書類を手にしたらそれだけで夜には体温が跳ね上がって叱られたばかりだ。


「俺を、だ。・・・覚悟は決めていた。それをおめおめと生き延びて-------」
「助けたかったからだ。」

弟の言葉を途中で遮ったバッシュは機嫌を損ねたらしく、睨んだノアを睨み返した。

「そんな下らん私情で、」
「下らなくはない。俺だけではない。ラーサーも、ヴェインですら望んだ。それは私情かい?」
「俺は・・・」
「失って良い命なんて無いんだよ。」

反論を見越した反論にノアは目を眇める。

「・・・相変わらず立派な偽善だなバッシュ。」
「そうかい?俺は偽善でも博愛でも無いと思うけれど。」

肩を竦めたバッシュはベッドの端に腰掛けた。

スプリングが軋んだ音を立てる。

「生きているからこそ意味があり、価値が生まれる。死んでしまえばそこで終わりなんだ。」
「・・・・・・・・。」
「死ぬ事は償いにならないんだよ。ノア、お前は逃げたかっただけだ。」

何からとはバッシュは言わなかった。

言う必要は無かった。

恐らくノアが逃げたかったのは、自分を取り囲む全てからだ。

そこはきっと逃げ場の無い地獄だったのだろうと思う。

だから逃げたがったのだ。


バッシュは予備として腰に挿しているナイフを抜いて柄を差し出した。

「納得が行かないのなら俺を殺せ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「そうすればお前にも分かる。お前になら俺は殺されて良いと思う。」

ノアは応えなかった。

予想通りだった。

その甘さが弟の弱点で、その甘さが愛しかった。


「・・・・今お前が死んだら9局が止まる。」

ノアはナイフを軽く押し返した。

漸くまともに喋った弟の言葉にバッシュは苦笑いを浮かべる。

咄嗟に思い付いたのだろう言葉は帝国の為だった。

弟は地獄の中に生きる場所を見つけていた。

だが見る見るうちに只でさえ少ない血の気が全く無くなって、
慌てて横にならせたバッシュは腰を上げた。

丁度休憩時間が終わる。

「この話はもう終わりにしよう。ノアは生きている。それで充分じゃないか。」
「・・・・・・・・。」

少し額に掛かった前髪を軽く手で梳き上げてやる。

「俺達が捨て駒である事には変わらない。でも、それは未来を作る為だ。」
「未来・・・。」
「そうだ。未来を作り、繋ぐ。その礎になるのが我々の務めだ。そうは思わないかい?」

バッシュの言葉のどこまで聞こえていたのか、ノアはゆったりとした寝息を立てていた。



多分、ノアにとって最悪な気分だったのはあれが最後だったのだと思う。

その後、復職する事に専念し出した様子に安堵したのはバッシュだけでは無かった。

ラーサーなど時間が空くとノアの側に居座っているらしい。


まだ状況は芳しくない。

しかし少なくとも薄氷を踏む様な危うさは無くなった。

バッシュに出来るのはノアが局に戻った時に、
戻る前と変わらない状態で引き渡す事だ。

9局はジャッジガブラスを頂点にほぼ完全な形で回っていた。
不完全なのは、局長の振りをしたバッシュの存在だ。

僅かたりとも質を落として返せばノアに無能だと鼻で嗤われるだろう。

それはどうしても避けたかった。

兄としての威厳もある。

それもノアに聞かれたら矢張り鼻で嗤われるのだろう。

そして恐らくはこう言われるに違いない。

「俺の兄がそんなザマでどうする。」

・・・・と。


「そこ」に追い込んだのはお前だろーーーーーーっ!!

・・・と言いたい気持ちを必死で押さえながら書きましたw

一応原作に近い設定で書きたかったので・・・。

とは言え時代背景考えたらバッシュが悪いとも言い切れないんですよね~・・・。

ノアたんが可愛くて可愛くて堪らない兄さんです。


不安材料ばかりが目立つ現在ではあるけれど、
「あなた」の未来が笑顔であることを祈って。


拍手御礼!PageTop日記と更新予定~。

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