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ザルガブ~。

ガブが公安総局に入って間もない頃。
登場人物以外全てが捏造。






手入れの行き届いた庭は花が咲き誇り、
木は若い葉を繁らせる。

鳥が鳴き、蝶は舞う。

暑くも無く、寒くも無い程良い季節に、
ザルガバースは視線を巡らせた。

花々から放たれる芳香のなんと香しい事か。

低木に張られた蜘蛛の巣も朝露に濡れて大層美しい。

ゆったりと歩く皇帝は時折立ち止まって庭の様子を観察している。

傍目には気ままに映るが、
この散策の時間も皇帝の一日のスケジュールに組み込まれているものだ。

一国の長であってもあと5分もしたら執務室に戻ってこれも設定された茶の時間まで仕事に追われる。

徹底管理されているのは、
公安総局だけでは無い。

寧ろ、帝国の管理外なのは旧市街に住んでいる外民達だけであろう。

そこでザルガバースは思考を止めた。

皇帝が足を止めたのだ。

倣って足を止めて、俯き加減だった顔を上げる。

グラミス帝の視線の先を辿って、
一瞬、ザルガバースは目を眇めた。

2人に向かって来るように歩いているのは、ガブラスだった。

何の変哲もない公安総局員の装備で、
兜も被ったままだがザルガバースには分かった。

彼の持つ雰囲気は、
明らかに他の局員とは違うのだ。

皇帝にも分かったのだろう。

だから足を止めたのだ。

彼はガブラスを殊の他気に入っている。

「ガブラス。」

足を止めて一礼し、
すぐに傍を通り抜けようとした男をグラミス帝は呼び止めた。

「は。」

短く応じて、今一度足を止めたガブラスがグラミス帝に向き直る。

外した兜の下から現れた顔は相変わらず整っていて、
だが表情に乏しく人形の様だった。

ガブラスは一瞬だけザルガバースに視線を向けて、
すぐにグラミス帝に戻す。

「局の仕事は慣れたか?」

グラミスの言葉にガブラスは頷く。

「粗方覚えました。」

応じた言葉にザルガバースは目を瞠った。

彼が公安総局に入ってからまだ間が無い。

それなのに、局内でも特に仕事の多い9局の仕事の大半を覚えるとは。

だが、彼なら出来る気がする。

アカデミーに居た頃から彼の頭の良さには舌を巻くものがあった。

「そうか。ならば局長補佐をする気は無いか?」
「「は?」」

皇帝の言葉に思わずザルガバースは間の抜けた声を出してしまった。

図らずもそれはガブラスと重なって、
思わず互いに顔を見合わせて、
同時にグラミスに視線を向ける。

「へ・・・陛下?それは・・・。」
「ガブラスに聞いておる。」
「失礼致しました。」

厳しい声にザルガバースは咄嗟に謝ったが、
それにしても突拍子が無さ過ぎる。

局長補佐は文字通り局長の補佐役で、
常に局長の側に付いて気が狂いそうな量の仕事を手伝うのが主な仕事だ。

必定、シフトは局長に合わせなくてはならない為、
自分の都合で休みを取ったりする事は出来ない。

通常、局に勤めて何年も経った古株が就く役職の1つである。

その仕事ぶりが認められれば次代局長に推してもらえる事もあるが、
まだ公安総局に入って何ヶ月も経っていない者が務められるものではない。

だから、ザルガバースとガブラスの反応は至って正常なものだ。

きっと他の誰が聞いても似た様なリアクションをするだろう。

「私はいずれガブラスを9局の長にするつもりだ。」
「「は?」」

また声が被った。

「ならば今から局長の仕事を覚えておいて損は無い。違うか?」
「違いません・・・が・・・些か突飛かと・・・。」

ここで同意を求められたザルガバースは辛うじて言葉を紡いだ。

驚き過ぎて何を言ったら良いのかわからなくなってしまったのだ。

良く代弁をしてくれるガブラスに縋る様に視線を向けると、
ガブラスは俯いていた。

「並々ならぬ御厚情・・・何と申し上げたら良いか・・・。」
「良い。追って知らせる。励めよ。」

穏やかな声のグラミス帝にガブラスはただ頭を下げた。

「は。」

俯いたまま一礼し、去って行ったガブラスの表情を確認する事は、結局ザルガバースには出来なかった。

少なくとも、嬉しそうには見えなかった。

確かにグラミス帝がガブラスを寵愛と言うに相応しい程買っているのは知っている。

ザルガバースだけでは無く、
それは公安総局でも有名で、
なまじガブラスがそれに見合う実力を持っている事から今から一目置いている者が少なくないのも知っていた。

だが新参者がいきなり局長補佐など。

「陛下・・・。」
「他の局員が納得しない、か?」
「はい。」

ザルガバースの素直な返事に、
皇帝は声を上げて笑った。

「心配無い。誰もがすぐに納得する。」
「お言葉を返す様ですが、根拠が・・・見えません。」
「根拠?根拠か。あるぞ?」

妙に自信に満ち溢れた表情。

口元には笑みすら浮かんでいる。

君主は上機嫌らしい。

だが、ザルガバースは、背筋を冷たいものが伝うのを感じた。

楽しげな皇帝が、怖い。

「あれはローゼンバーグの血筋だ。それも直系のな。」

声を潜めて告げられた名に、
ザルガバースは眉を寄せた。

「ローゼンバーグ・・・?」

どこかで聞いた覚えのある名前。

それも比較的最近。

だが、昨日今日ではない。

「ランディスの、」
「!!」

今しがたまで居た男の祖国の名を聞いた瞬間、
ザルガバースは声を上げそうになった。

ローゼンバーグ家。

今は跡形も無いランディス共和国に於いて代々騎士団員を輩出する軍人の名家で、
ランディス戦の前に死去していた当主は歴代の中でも随一の才覚を誇り、
もしも彼が存命であったなら帝国のランディス攻略は時間も人員も予算も遥かに予定を越えたであろう事はランディス戦後暫く帝都でも話題であった。

そして当主の遺された家族は戦後、離散したと噂に聞いている。

「で・・・ですが陛下、当主の息子は国外へ亡命したと・・・。」
「子供は1人だけでは無かった、と言う事だ。そしてその”もう1人”は我が帝国に居た。」
「・・・・・・・!」
「確かに亡き当主の血も才も見事引いていると思わぬか?」

口元を歪めて笑んだ国主に、
言葉は出なかった。

何を言ったら良いのかもわからなかった。

言葉そのものを失ってしまったかの様に。

「文武共に秀でた逸材で才覚は折り紙付きだ。逃す手は無かろう?」
「ですが・・・ガブラスは・・・。」

ほんの数年前に祖国を滅ぼされた亡国の民なのだ。

ガブラスが帝国に来た詳しい経緯は知らないが、
己が祖国を手に掛けた国に流れ着いた彼は、
今、その帝国に囚われようとしている。

グラミス帝の入れ込み様から取り込んだガブラスを手放す気が無い事は容易く知れた。

その為の厚遇なのだ。

その為の寵愛なのだ。

ガブラスは知っているのだろうか。

今後の彼の人生に於いて選べる道が無くなっている事を。


その歯車は彼が公安総局---------否、アカデミーに入った時に動き出していたに違いない。


ザルガバースは思わず彼の去った方を振り返って、
その一瞬に庭木の間に張られた蜘蛛の巣に気が付いた。

気付きたくは無かった。

蜘蛛は、煌めく糸に蝶を捕らえていた。


長い事書きたかったお話です。

毎度のことで中々纏まらなくて、
漸く纏まりました。

ありがとうニーアのサントラ。←

これは「その後」を書きたい話ですなあ・・・。

日記~。PageTop日記と更新予定~。

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