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10月31日<2> ~追われる者~

一方年長組は。




「トリックオアトリートォォォ!」
「取られてなるものかァッ!!」

遠くで攻防戦を繰り広げる局長達の声を聞きながら、
ザルガバースはギースに胸倉を掴まれていた。

「降って来た・・・!降って来たぞあの男!!」
「降ってって・・・落ち付けギース。菓子は守ったのだな?」

胸倉を掴んだまま揺するギースを制したザルガバースは、
菓子を死守したギースを取り敢えず褒めた。

人一倍高い自尊心のせいか、
すぐに落ち着きを取り戻したギースが今しがた己の身に起こった一部始終を身振り手振りを交えて語る。

ギースは中庭を抜けようとした。

周囲に誰も居ない事を確認して、
一気に駆け出したその瞬間。

目の前にガブラスが”降って来た”。

走っている最中の足に急ブレーキをかけて、
慌てて方向転換をして渡り廊下から東棟に逃げ込んで、
入り組んだ廊下を縦横無尽に走り抜いて追う足音が聞こえなくなった所でザルガバースと会ったのだった。

「どこから降ったのだろうな。」
「むう・・・。」
「幾らガブラスでも何も無い所からは降る事は出来まい。」
「・・・まあ一応あれでもヒュムだしな。」

ひどい言われ様だがザルガバースは否定や訂正する気持ちにはなれなかった。

一番厄介なガブラスを潰そうと徒党を組んで挑んだ局長達3名が返り討ちにあったのを偶々目撃したのは数時間前の出来事であるが、
その強烈な印象は今も脳裏に焼き付いたままだ。

「あの時はいきなり人数が減ったな。」
「馬鹿どもめが。数で勝てる相手だったら誰も苦労せんわ。」

愚痴を零すギースに苦笑いをして、
どう切り抜けようかザルガバースは思案する。

残っている”かご持ち”は恐らく己ら2人だけだろう。
つい今しがたまで聞こえていた怒声が消えている。

自分達も”向こう”を何人か削ったが、
面倒な事にガブラスとドレイス、ベルガはまだ健在だった。

日付が変わるまであと1時間を割っている。

ここまでなんとか逃げたのだからもう菓子を渡しても良い気はするが、
逆になんとしても渡したくないと言う思いもある。

「・・・ところで、今更な疑問なのだが。」
「何だ?」
「仮に制限時間いっぱい逃げ切ったとして、この菓子は誰のものになるのだろうか?」

ザルガバースの素朴な疑問に、ギースは首を傾げた。

「その疑問にお答え致しましょう。」
「わあっ!?」

いきなり背後から声をかけられて、
ギースは飛び上がった。

ザルガバースも悲鳴こそ上げなかったが、かなり驚いている。

文官姿の男は、ラーサーの御付きだと名乗った。

「もしも菓子を守り切られました場合は、貴方がたのものとなります。」

真顔で告げられて、ギースもザルガバースも暫し言葉を失った。

「・・・いらんわーっ!これだけ局中駆けずり回されて菓子の詰め合わせ1つだと!?」
「ですがその菓子はどれも滅多に入手できない貴重な品々。奥方様への御土産になされば御喜びいただけるかと。」
「「・・・・・・・・・。」」

その手があったか。

妻帯者2人が顔を見合わせる。

「良し、意地でも守り抜くぞ。」
「・・・ここまで来たら、な。」

ギースの愛妻家ぶりを知っているザルガバースは小さく笑んだ。

ザルガバースも妻が愛しく無いわけではないが、
愛情と言うよりは留守の多い己に変わって家庭を守ってくれる事への感謝を込めて菓子を渡したい。

ゆっくりと瞬きをして、ザルガバースはギースと別れた。


南棟を走るでもなくゆっくりと歩いていたザルガバースは不意に足を止めた。

光源は常夜灯のみの暗がりの向こうに誰かの気配を感じたのだ。

「ギースはベルガとドレイスの連携に負けた。」
「・・・そうか。」

耳に馴染みのある声にザルガバースは小さく溜息を吐く。

「残るは卿だけだ。」
「全く、いきなり3人倒されるとは思わなかった。」
「見ていたのか?」
「遠目だが。」

ザルガバースの返事を聞きながら、
革靴の堅い足音はゆっくりと近付いて来る。

「ギースが卿がいきなり目の前に降って来たと驚いていた。」
「窓から外を見たら偶々見掛けた。」
「何階から?」
「2階。少し足が痛かった。」

”少し”なのか。

公安総局の天井は何と比べなくても高い。
2階と雖も結構な高さだろうに。

ザルガバースは小さく苦笑いをして、
今日1日提げて歩いていた菓子かごを床に置いた。

「菓子はここにある。」
「卿の後ろか。」
「時間内に取りに来れれば卿の勝ち、だ。」

残り時間は5分を割っていた。

近付いていた重々しい足音が不意に消えて、
突然目の前に現れた姿にザルガバースは咄嗟に防御の構えを取った。

大きく踏み込んで、下段から裏拳を勢いよく跳ね上げたガブラスが小さく舌打ちをして、
それでもガードを組んだ腕を崩して2撃目に繋げる。

今度は上から降って来た手刀を肩に叩き込まれる直前に掴んだザルガバースは、
もう一方の手でガブラスの首を掴もうとしたが、
その手は空いていたガブラスの片手に弾かれて足払いをかけられた。

しまったとガブラスの手を放すと、
今度はガブラスがザルガバースの手を掴む。

背を廊下に強かに打ちつけてザルガバースが眉を寄せると、
その手を掴んだままのガブラスがザルガバースの胸の上に片膝をついて乗っていた。

ザルガバースが溜息を吐き、
降りたガブラスが菓子かごを拾う。

直後。

0時を知らせる鐘の音が鳴り響き、ゲームの終了を告げた。

「・・・終わったか。」
「今日は1ヶ月分くらい走った気がする。」

ガブラスの言葉に大いに同意したザルガバースが手を借りて身を起こし、
礼を言うと首を振ったガブラスはかごを差し出した。

「?卿のものだぞ?」
「俺はこんなに菓子ばかり要らない。奥方殿へ持って帰られよ。」
「・・・・・・・・・。」
「ベルガとドレイスもギースに改めて詰め合わせた物を渡していた。」

淡々と言葉を紡ぐガブラスの顔が常夜灯に照らされた。

端正な面差はアカデミー時代と比べると確かに歳を重ねていたが、
気配りの細やかさや優しさに変わりは無い様だ。

「・・・ありがとう。妻も喜ぶだろう。卿からの贈り物ならば尚更、な。」
「そんな大層なものではない。」

帝国で随一の人気を誇る男が真顔で返す。

漸く終わった長い1日に、
鐘の音を聞きながら局長達は安堵の息を吐いた。


ベルガとドレイスが詰め直したのはギースだけの分では無く、
局長全員分。
で、全員に分配して持って帰るなり局に置くなり後は好きにしろと。

局長達、争奪戦が目的で菓子は(ドレイス以外)二の次だった様です。


そして翌日、溜まりに溜まった仕事を見て揃って遠い目をする局長達が見られたそうです。

ヴェイン様、出番無かった。

あ、各局局員?

勿論面白がってましたよ。

自分の所の局長に他の局長の居場所教えたりとかサポートしてくれたみたいです。

日記~。PageTop日記と更新予定。

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