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時計

FF12発売10周年記念SSその6

バルフレア×ガブラスです。









それは、偶々だったのだろう。
忙しい日々の中で、偶々見掛けて、偶々喋る機会があって、その言葉が偶々心に強く響いた。
それだけの話だ。

そこに他意は無く、言った本人も、もう憶えていないに違いない。
バルフレアは、一言一句忘れた事は無いのに------------------



「器用なものだな。」
「”流石はエトーリアの息子”ってか?」

鼻で嗤って返すと、男は不思議そうな顔をした。
何故、バルフレアの機嫌が良くないのか、分かっていない様だ。

「これぐらい、あんたなら朝飯前だろう?」
「どうだろうな。時計は余り触った事が無い。」

バルフレアは、もう一度鼻で嗤った。
余り、と言う事は、弄った事があるのだ。
バルフレアなどよりも桁違いに器用な男は、本棚から一冊、本を取り出した。


バッシュに用があってダルマスカに向かったが、会えたのは彼の相方のウォースラだった。
いつもは嫌そうな顔をするくせに、今日は妙に愛想が良いから、何かと思ったら時計の修理を押し付けられた。
直している間にでもバッシュが来るのだろうと思っていたが、どうやら多忙な将軍様は今日は出張で戻らないらしい。
それで、騙されたと憤慨していたら、代わりの様にバッシュに良く似た双子の弟------------ジャッジガブラスが現れたのだ。

正直な所、心臓が止まるかと思った。
何の心の準備も無いまま、まさか会うとは思わず、それでも減らず口が叩けたのは、気合と根性と、意地に依る所が大きい。
それでも、相当に動揺したのはバレた様で、ガブラスは開口一番に捕まえに来た訳ではないと言った。
そんな事で驚いたわけでは無かったが、勘違いさせていた方が都合が良いと思って、バルフレアは敢えて否定はしなかった。

「ッたく、このボロ時計が・・・・・・・。」
「良い時計だと思うがな。」
「分かってるよ。だから直したいんじゃないか。その辺のショボい時計なら捨ててる。」

今のバルフレアと同じく、不機嫌な時計は中々針を動かさない。
原因と思しき部品を交換してみたが、矢張り反応は無く、溜息を吐いたバルフレアは、工具を一旦床に置いた。
眼鏡を外して、凝った肩を回して解して、それから大きく伸びをした。
ぱきぱきと、背骨が小気味の良い音を立てる。

「あーくそっ・・・こんな事をしに来たわけじゃないんだけどな・・・・・・・・・。」
「では、どんな事をしに来たのだね?」
「---------------------!」

ガブラスにしてみれば、何の変哲も無い、普通の質問のつもりだったのだろう。
現に、ソファに腰掛けた男は、何かの本を読んだまま、顔も上げない。

しかし、その何気ない一言で、バルフレアのスイッチが入った。
もう、時計なんて、どうでも良くなった。
憂さばかりが溜まって、面白くなかったのだ。
少しぐらい楽しい思いをしても、罰は当たるまい。

バルフレアは、大股でガブラスに近付いた。
目の前に立っても、ガブラスは見向きもしない。
完全に、舐められている。

「あんた、ちょっと無防備過ぎないか?」
「空賊如きが私を殺せると思うのならば、試して見ると良い。」

既に気構えているバルフレアとは対照的に、ガブラスは相変わらず読書に勤しんでいる。
明らかに有利な状態でも、ガブラスの言う通り、バルフレアは勝てる自信が持てなかった。

一時とは言え、バルフレアも公安総局に身を置いていた。
その、ほんの短い間でも、ジャッジマスターが桁違いである事は、見聞きして知っていた。
”才能がある”程度では、入局するのが精一杯の公安総局の中で、頂点を極めたジャッジマスター達は、最早ヒュムの域を外れた、雲上の存在だった。
特にガブラスは、属領民の出ながらも皇帝に見初められる程の逸材で、ジャッジになる為にアカデミーに入り、ジャッジマスターになる為に公安総局へ入局した様なものだ。
親の威光で、”ジャッジになった事がある”程度のバルフレアが、太刀打ち出来る相手では無い。
だが、それは命を賭けたやり取りに関しては、だ。
ガブラスが苦手とし、バルフレアが得意とするものもあった。

先ず、本を持っている手を掴んだ。
ガブラスは、本を持ち替えた。
この程度の邪魔ならば、ヴァンで慣れているのだろう。
もう一方の手を掴んだ所で、ガブラスは漸くバルフレアを睨み上げた。

「何か用でもあるのか?」
「用が無かったら邪魔をしたらいけないのか?」
「------------------邪魔をしている自覚はあるのだな。」

ガブラスは溜息を吐いて、掴まれたままの手で器用に本を閉じた。
一応構ってくれる様だが、如何にも仕方が無いとでも言いたそうな怠惰な動きに、バルフレアは笑った。

「時計はもう良いのかね?」
「飽きた。」
「頼まれたのは君だろう。」
「気分転換しないと気乗りしない。」

そう言って、バルフレアは本のすぐ下、手首にキスをした。

「!」

予想通りガブラスは相当驚いた様で、その様子が見れただけでバルフレアは大分胸が空いた。
そのまま腕を伝い下りて、肘まで至った所で唖然としたままのガブラスに圧し掛かる。
ソファの座面に倒れた所で、ガブラスは漸く我に返った様だった。
暴れられる前に、手足を押さえ込んだ。

「貴様、何を!?」
「油断しすぎだぜ?局長閣下。」

完全にマウントを取ったバルフレアは、口の端を歪めた。
諦めたのか、ガブラスは溜息を吐いて、そして真っ直ぐバルフレアを見上げて来た。

「何のつもりだ。」
「男が押し倒して来たら目的は一つしか無いだろ?」
「君が手が早いのは知っていたが、男も相手にするとは思わなかった。」
「おいおい、見境無しみたいに言うなよ。これでも相手は選んでるんだぜ?」
「それでは私は君に選ばれたと言う事かね?」

ガブラスは平然としていた。
バルフレアの膝が既に両脚の間に割り込んでいると言うのに、嫌がるでも無く、恥じらうでも無く、ただ淡々とバルフレアを見上げて来た。
軽くキスをして、一旦身を起こしたバルフレアは皮肉げな笑みを浮かべた。

「空賊如きがジャッジマスター様を選ばせて頂くなんて、畏れ多い事ではございますが?」

ガブラスは、また溜息を吐いた。

「君らしくないな。君は己を卑下する男では無かろう。」
「へえ?俺の事、良く知ってる風な口振りだな。」
「当たり前だ。公安総局にどれだけ君のデータがあると思っているんだ。」

おどけて言ったつもりだったが、ガブラスの眼差しは真剣だった。
バルフレアの真意を見抜こうとしているのだ。
だから、バルフレアも必死で本音を隠した。
知られたくなかった。
知られる訳にはいかなかった。
知られてしまったら、”バルフレア”では居られなくなってしまう。

しかし。

「では、何を恐れている?」
「-----------------------------!」

表面を取り繕ったぐらいで、誤魔化せる相手では無かった。
思わず絶句してしまったバルフレアの下から抜け出したガブラスは、多少乱れた衣服を整えて、食器棚に向かった。
茶器を二人分出して、湯を沸かし始める。
バルフレアは、動けなかった。
いきなり核心を突かれたのだ。

「シドか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「確かに彼は名門の血が創り上げた最高傑作だ。だが--------------」

君は君だろう?

何年振りだろうか。
ずっと、忘れなかった。
バルフレアが、”バルフレア”になるきっかけとなった言葉だった。

茶を淹れる音を聞きながら、バルフレアは体勢を代え、ソファに座った。

「あの時も恐れていたな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・憶えてたのか。」
「忘れるわけがない。私の何気ない言葉が君を空賊にしてしまったと悔いたんだ。」
「あんたのせいじゃない!」

バルフレアは即座に否定した。
ガブラスは苦笑いを浮かべて、茶を出してくれた。

「切っ掛けにはなった。でも、あんたのせいじゃない。」
「そうか。」

あの頃のバルフレアは全てが恐かった。
名門の血。父の威光。ブナンザの家に生まれた宿命を粛々と受け止める兄達も、色眼鏡で見て来る周囲の者達も。

御立派な御父上がいらっしゃって--------------
流石はエトーリアの御子息------------------
お兄様達も御立派で--------------
ファムラン様も御父様お兄様達の様な----------------

何故誰も疑問に感じないのだ。
敷かれた道を只辿るだけの事が、何故当たり前なのだ。
我が道を行きたいと思うのは、異端なのだろうか。
己で道を見つけたいのは、自分だけなのだろうか。
それは、許される事では無いのか。
認めては、もらえないのか。

当時、その答えを見つけるには、あまりにもバルフレアの世間は狭過ぎたのだ。
だから、
だから。

空賊になりたかったわけじゃない。
自由になりたかっただけだ。

「ははっ・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「私は君が一番シドに似ていると思う。」
「それも良く言われたな。俺が一番オヤジに似てる。俺が次のエトーリアだ・・・・・・・でも無理だった。俺はエトーリアになれない。・・・・・・・・・・・オヤジみたいにはなれない。」
「まあ-----------無理だろうな。」

自分の茶も用意したガブラスは、自嘲したバルフレアの向かいに座った。

「シドは稀代の逸材だ。そんなエトーリアが次々生まれたら稀代と言う言葉が意味を為さなくなるだろう。」
「そうだけど・・・・・・・・・・。」
「君は君らしく在って良かったんだ。シドも君が出奔した時はショックを受けていたが、今は君の生き方を認めている。」
「--------------------オヤジが?」
「彼は君が思っているよりも遥かに子煩悩だよ。ただ、あまりに変人すぎて分かり難いだけだ。」
「あー・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

自分の親の事ながら、全く否定が出来なかった。
込み上げて来る可笑しさを隠す気も無く、一頻り笑うと、鬱々とした気分は晴れていた。

「あんた、やっぱり俺が惚れただけの事はあるな。俺が欲しいって思う言葉、良くそれだけポンポン出て来るもんだ。感心するぜ。」
「--------------------------何?」
「なんだよその顔。俺が洒落や冗談で男なんかに手ェ出すわけないだろ?」

ガブラスは素で驚いた様で、その顔を見て、バルフレアはまた笑った。
バルフレアはバルフレアだ。
あの頃の様な、何も知らない小僧じゃない。

ジャッジマスターと空賊が対等では無い事ぐらい分かっている。
それでも、あの頃よりは近付いた自負があった。
”バルフレア”になってから、それなりに経験も積んだ。
時計は止まっても、時間は流れ続けるのだ。

「覚悟しておけよ?絶対口説き落としてやるからな?」
「勘弁してくれ・・・・・・・・・・・・。」

ゴキゲンなバルフレアとは対照的に、ガブラスは深い溜息を吐いて、頭を抱えた。


うちにバルフレア君は、ガブの何気ない一言を人生の転機にしたので、ガブの知らない所でガブに対して強い印象を持っている設定でした。
とは言え、詳しく書く機会も無かったのですが、丁度記念SSだし・・・と言う事で、この話にしました。

イメージの中では廊下ですれ違った時にちょっと話をした程度なのですが、前提として、ブナンザ家は代々機工士。
当時兄達はシドの言う通りドラクロア研究所に既に就職していて、ファムランも研究所に来いよ!って事でアカデミーに入学→せめてもの抵抗でジャッジの道を選んだけれど、結局シドの意向に背き切れていないし、みんなシドの息子シドの息子うるさいし、でも反抗したらどうなるのか分からないし、そもそも具体的に何をやりたいのかも分からない。
でも、親兄弟や周囲の言う事聞くだけの人生に違和感。

で、ガブはザルガバースからファムラン少年が悩んでいる様子を聞いていて、仲の良いジャッジマスターが気に掛けているから、見掛けた際に何の気なしに声をかけてみたら、少しして出奔---------------みたいな展開です。

そっちをSSにしようかとも思ったのですが、ぶっちゃけ面倒臭くて気乗りしなくてですな・・・・。

バル「ま、そんなわけだから!」

ガブ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

目が死んでる36歳。

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