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ソリドールの悲劇

子供時代のヴェインとガブ。
私の漠然としたイメージの権化なので、捏造大爆発です。
暗いです。














「ノア、ここに居たか。」
「陛下---------------」

振り返るなり、ガブラスは跪いた。
相手が誰なのか、顔を見なくても分かった。
この国に於いて、ガブラスのファーストネームを呼ぶのは二人しか居ない。
そのうちの一人がアルケイディア帝国第十一代皇帝、グラミス・ガンナ・ソリドールだ。

グラミスは顔を上げる様に言って、周囲を見回した後に溜息を吐いた。

「そなた、ヴェインを見なかったか?」
「いいえ。本日は御見掛けしておりません。」
「全く、どこへ行ったのか-----------------見掛けたら私の部屋へ来る様、伝えてくれ。」
「畏まりました。」

ガブラスが一礼すると、グラミスはもう一度溜息を吐いてから去って行った。
その後ろ姿を見送って立ち上がったガブラスが軽く咳払いをすると、廊下の曲がり角から一人の少年が出て来た。
身なりは立派で顔立ちも整っているが、俯いた表情は陰鬱だ。

「-----------------父上は私がお嫌いなのだ。」
「その様な事は無いかと存じます。」
「お前に何が分かる。」

少年----------------ヴェインは露骨に顔を背けた。
ガブラスは傍らに膝を折る。

「愛しているからこそ、厳しくせねばならぬ時もあるのです。」
「父上は厳しいばかりだ。」
「それはグラミス様がこのアルケイディア帝国の皇帝であらせられ、ヴェイン様が皇子でいらっしゃるからです。一挙手一投足が国民の目に晒されなければならないお立場なれば、可愛いばかりでは済まされないのです。」

どうか、陛下の御心中もお察し下さいませ。

ガブラスが言うと、ヴェインは俯いたまま唇を噛み締めた。
ヴェインは聡明な子供だ。
本当は分かっているのだ。
ガブラスが言いたい事も、自分が何をやらなくてはならないのかも。
ただ、十三歳の子供にはそれは重過ぎるのだ。

「じきに殿下も本格的に政務を執り行わなければならなくなります。そうなればきっと、グラミス様のお気持ちも見えて参りましょう。さ、陛下へは私が話します。御一緒に参られませ。」

ガブラスが立ち上がろうとした時だった。
顔を上げたヴェインは、ガブラスをきつく睨み付けて、行かぬ、と叫んだ。

「良くもそこまで父上の肩を持てるものだな!お前の祖国を滅ぼしたのが誰なのか、忘れた訳ではあるまい!」
「-------------------------。」

居丈高な声に一瞬ガブラスが言葉を失うと、その寸の間にヴェインはひどく青褪めて、落ち着きなく視線を彷徨わせた末に、結局また俯いてしまった。
きっと、この繊細な少年は、自分の言葉に傷付いてしまったに違いないのだ。

ガブラスは聞かなかった事にして、再度促した。

「--------------------さ、参りましょう。」
「行かぬ。」
「殿下・・・・・・・・・・・・。」
「私の名は”殿下”ではない!」

ヴェインは叫んだ。
その悲痛な声にヴェインが何を欲しているのか、本心では何を望んでいるのか、ガブラスは初めて察した。
ガブラスは、改めてヴェインを見上げた。

「失礼致しましたヴェイン様。」
「・・・・・・・・・・・・・・うむ。」

名を呼ぶと、ヴェインは腕を組んで鷹揚に頷いた。
しかしその様が自分でしっくり来なかったのか、一旦首を傾げ、少しの間考え込んだ末に吹き出した。

「うーん、私には父上どころか兄上達の真似すら未だ早い様だ。」
「すぐに追い付きましょう。陛下も兄君様達も、その時が早く来ないかと楽しみにしておいでです。」
「そうかな。---------------ううん、そうだ。きっとそうだ。」

そう言って、ヴェインは晴れやかに笑った。



ガブラスは早足で廊下を渡り歩いていた。
何故。
どうして。
ガブラス胸の裡で、疑問が渦を巻いた。
血迷ったとしか思えなかった。
グラミスの執務室の前に至って、何をどうしたら良いのか分からなくなって、ガブラスは俯いた。
それでも主の真意を問いたくて、ドアをノックしようと手を上げた時だった。

「ガブラスか。入れ。」
「----------------------はっ。」

皇帝の声は穏やかだった。
ガブラスが入室すると、グラミスは手を背後で組んだ格好で、壁に掛かった絵を眺めていた。
ガブラスは何も言えなかった。
グラミスも喋らなかった。
永遠とも感じられる沈黙を破ったのは、グラミスだった。

「そなたならばすぐに勘付くだろうと思っていた。」
「陛下・・・何故にございますか・・・・・・・?どうして殿下達をヴェイン様に!御三方とも陛下の大切な御子では」
「短慮故、だ。元老院如きの口車に容易く乗せられおって。」
「あんまりでございます!余りに・・・・・・・」

それ以上、言葉が出なかった。
いつの日か見た無邪気な笑顔が、脳裏に浮かぶ。

「この件には関わるな。ヴェインも放っておいて良い。」
「陛下!」
「聞こえたな?二度は申さんぞ。」

厳しい声音に、ガブラスは俯いた。
そのまま一礼して、執務室を出た。
グラミスは、振り返らなかった。

ヴェインの才覚は、幼い頃から見え隠れしていた。
頭の回転が早く、そう待たずとも父帝の手助けが出来る様になると、誰もが口を揃えた。
ガブラスもそう感じていた。
それが、この様な形で実現するなどと、誰が想像しただろうか。

間もなく、二皇子が暗殺された事が公表された。
犯人はその場で取り押さえられ、すぐさま処刑された事も。
それだけだった。
それで終わりだった。
公安総局には皇帝宮の警備の強化が命じられたが、その中に住まう者をどう警戒したら良いのか、ガブラスに教えてくれる者は居なかった。


どうも私の中で、小さい頃のヴェイン様は無邪気な普通のチビッコで、兄上達の暗殺を機にがらりと変わってしまった設定が出来上がっていたらしく、いつかその漠然としたイメージを形にしたいと思いながら結構な時間、放置していました。
まあぶっちゃけるとヴェインやガブの心の機微を描写するのが面倒くさかっただけです。すみません。

以前にも書いた覚えがありますが、兄皇子達の暗殺をグラミスが思い切らなければ、また、それをヴェインに命じなければ、きっと皇帝親子の関係は違ったものであったと思います。

ガブは皇帝陛下のお気に入りだから、一般ジャッジの頃からちびヴェインとも接する機会があったりして、子供相手に恨み節をぶつけても仕方ないからと例の年下に甘い回路が発動して、割合良好な関係にあったら良いと思いました。
その方がガブの根暗に磨きがかかって、その後のヴェイン様の人格形成にも多大な影響を及ぼすかなー・・・と言う完全に私の都合に依るものですが。

大体のイメージとして、ガブに対して面倒見てくれるとか、割合良いイメージを持っていたヴェイン様だったけれど、事件後はあんまり会う機会が無くなって、会っても殆ど喋ってくれなくなって、ヴェイン自身悲しくて淋しくて辛いのに、助けてくれないガブを逆恨みー・・・・と言う感じ。

ガブはグラミス帝から関わるなと厳命をされていたから、ヴェインが可哀想だとは思っても、主君の命を優先させざるを得なかった。
長じたヴェインがその事に気付いても、結局は苦しむヴェインよりもグラミス帝からの命令に従ったガブが憎い。
好きだったのに。味方だと思ってたのに。
好きだった分、憎くて恨めしくて--------------------で、最終的に昏黒の夢に繋がるイメージです。

何もかもが憎かったガブが、ここまでヴェイン様の面倒を見ていたのか?と言う根本的な疑問は見なかった事に。


ヴェ「------------------と言う訳だ。分かったか?」

ガブ「・・・・・・・・・・はい。」

ヴェ「・・・・分かって無いだろう?」

ガブ「いえ、説明は分かりました。」

ヴェ「そうではなくて、私の気持ちは分かったのか?」

ガブ「色々ありましたが、ヴェイン様は矢張りお優しい方であると言う事は分かっていますよ?」

ヴェ「うむ。分かった。分かっていないんだな。分かるまで教えてやろう。」

ガブ「え?」

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