FC2ブログ

青イ鳥2<2>

現パロ魔人×武人。

愛する事が罪なのならば、貴方は赦してくれるだろうか。















「ただいま。」
「お帰り。」
「!」

リビングから聞こえた声に、ゴルベーザは靴を脱ぎかけた半端な姿勢のまま、一瞬動きを止めた。
もう帰っているとは思わなかった。
無論返事を貰うとも思っていなくて、自分で適当に言った挨拶に、予想外に驚く破目になった。

「今日は早いのだな。」
「結婚記念日だと。」
「?」
「会長と社長の。」
「-----------------------ああ。」

仕えるべき当人がさっさと帰ってしまったのなら、ガブラスがいつまでも会社に居残る理由も無い。
強面の恐妻家と、儚げな風貌の敏腕社長を順に思い浮かべたゴルベーザは、苦笑いを浮かべた。

「では今日はのんびりできるな。」
「お陰様で。」

言いながら、ガブラスは切った野菜を鍋に投入した。
一見豪快だが、細かな所まで気が配られた料理は、外れが無い。

「まだ出来上がるまで少しかかるから、シャワーでも浴びて来い。」
「ああ。」

さらりと言われた事に当たり前の様に応じた後、ゴルベーザは苦笑いを浮かべた。
色気は無いが、まるで夫婦の会話だ。
ここまで互いに馴染んでいて、これ以上何を望めと言うのだろう。
--------------望むべきではあるまい。それが、互いの幸せの為なのだ。


汗と汚れを流してリビングに戻ると、ガブラスは缶ビールを出してくれた。
料理も、ゴルベーザが座る頃には出揃った様だった。

「グラスは?」
「いや、このままで。食器は私が洗おう。」
「頼む。」

ガブラスは自分の席にも缶ビールを置いて、漸く座った。

「遅かったな。」
「・・・・・・・・・・・弟が会社の近くに来てな。少し、話をした。」
「そうか。仲が良いな。」

言いながら、ガブラスは缶を開けた。
思い出した様にゴルベーザも開け、少し、様子を窺った。
ガブラスは平然としている。

「お前は・・・・・・・兄とは会わないのか?」
「そうだな・・・・互いに忙しいし、用が無ければ会う必要も無い。」

でも。
そう言って、ガブラスは一旦ビールを飲み、苦く笑った。

「お前達を見ていると、偶には会うのも悪く無いかな・・・・とは思うんだがな。」
「会えるのならば会った方が良いぞ。」

ゴルベーザが箸を止めて言うと、ガブラスは溜息を吐いた。
ゴルベーザ自身、セシルと兄弟らしい関係を築ける様になるまで、二十年近い月日がかかった。
その間、せめて生き別れた弟の幸せを願ってやれれば、これほど長い年月をかけずに済んだかもしれない。
しかし、現実は優しくは無かった。
その約二十年の間、ゴルベーザがたった一人の肉親に望んだのは、憎悪と、一刻も早い死だった。
外的要因があったにせよ、当時の事は二度と思い出したくは無いし、今はセシルが誰よりも可愛い。

「ただ、絶対小言を言われると思うと面倒でな。」
「それだけ愛されていると言う事だろう?なんだ、不仲だと言うから触れない方が良いのかと思っていたが、全くそんな事は無いではないか。」
「お前は他人だから気楽にそう言えるんだ。」

ガブラスは珍しく不貞腐れた。
その様が妙に子供っぽくて、ゴルベーザはこっそり笑った。


ゴルベーザが食器を洗っている間に、ガブラスは風呂に入った様だった。
シャワーの微かな水音を聞きながら、泡立つスポンジで皿を擦る。

誰かを好きになる事。
それはゴルベーザにとっては大罪を犯すに等しく、決して近付いてはならない聖域だった。
告白をし、素直に受け入れてもらった現在も罪悪感は常に胸にあって、こんなにも苦しいのならば、矢張り告白はすべきでは無かったのだと悔いるも、時間は巻き戻せない以上、無かった事にも出来ない。

ゴルベーザは、殊更深い溜息を吐いた。

「どうした?」
「!?」

突然背後から声を掛けられて、焦ったゴルベーザは掴んでいた皿を落としてしまった。
然程高さは無かった筈なのに、当たり所が悪かったらしく、小振りな皿は儚い音と共に割れてしまった。

気が付けば結構な時間、思い悩んでいたらしい。
いつの間にか、ガブラスは風呂から出ていた。

「す、すまん。すぐに片付ける。」
「おい、そんな持ち方をしたら手を切るぞ。」
「!」

ガブラスの言った端から、ゴルベーザの手に瞬間的な痛みが走り、見る間に血が溢れて出た。
馬鹿みたいだった。
考えなしに破片を掴むなんて、我ながらどうにかしている。

「傷口を水で流せ。今、手当てを。」
「すまん・・・・・・・・。」

ガブラスが、足早に救急箱を取りに行った。
その際、シャンプーの香りがゴルベーザの鼻先を擽って、呆けた様にその後ろ姿を見送る。
ガブラスはすぐに戻って来て、ゴルベーザの手を掴んだ。
それから眼前まで持って来て、傷口を観察して、上目遣いでゴルベーザを見上げた。

「破片は残っていないな?」
「ああ。」

ガブラスの手当ては手早かった。
相変わらず何をやらせても器用な男である。

ガブラスが動く度に、清潔感のある匂いが鼻腔に届いた。
視界に入るのは、濡れたままの、濃い金髪。
ぼんやりと見つめていると、ガブラスが顔を上げた。
ふわり。
これは、石鹸の匂い。

「痛むか?」
「・・・・・・・・・・・・・いや。」

ゴルベーザは嘘を吐いた。
本当は、脈動に合わせてひどく痛む。
どくん。
ずきん。
ふわり。

「寝る時、痛いかもな。」

体温が上がるから。
ガブラスはそう言って、手を離した。
ゴルベーザは、掴み直した。
ずきん。
曲げたら、また痛んだ。
ガブラスが、不思議そうにゴルベーザを見上げる。
指先の痛みと、心地良い香りが全身を支配している様だった。
そう、心すらも------------------------

「ッ・・・・・・・ゴルベーザ!放せ!」

みしみしと音がする。
骨が軋む音だ。
もう少し力を込めたら、折れてしまうだろうか。
痛みと共に、指先に熱が広がった。
止まりかけた血が、また出たのかもしれない。

「傷が・・・・・・・・・・・・」

ガブラスは、言いかけた口を開いたまま、止まった。
湯上りの頬は、すべすべとしていて、触り心地が良かった。
良い香りがする。
耳の近くに鼻を寄せると、ガブラスはびくりと震えた。
シャンプーと、石鹸の匂い。
それから、ガブラスの匂い。

「ゴル・・・・・・・・・?」

抱き込んだ体は、ぽかぽかと温かかった。
何が起きたのか分かっていないのか、ガブラスは抵抗もせず、ただ大人しく腕の中に収まっていた。

ガブラスは、基本、他人を一切信用しない男だ。
だが、本当は---------------少なくとも家族と離れて暮らす様になるまでは、大事に大切に、愛されて育って来たのだろう。
本人は気付いていない様だが、時折、そんな事を思わせる様な甘え方をして来る。
共に暮らす程心を許した相手ならば、決して害は為すまいと思っているのだ。
だから、ゴルベーザは愛おしい。
だから、ゴルベーザは苦しくて、辛くて、どうにも出来なくて-------------------

不意に、ぽんぽん、と背を叩かれた。
泣く子を宥めるような、優しい手。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「お前はすぐ抱え込むんだな。どうした?言いたい事があるなら言え。」

ガブラスが、ゴルベーザを見上げた。
困った様に笑っていた。
ゴルベーザは何故か泣きそうになって、堪えるのに目を伏せ、唇を噛み締めた。
鉄錆の味がするのは、噛み破ってしまったからか。

不意に視界が暗くなって、ゴルベーザは目を見開いた。
頭を抱え込まれたのだと気付いたのは、数秒経ってからだった。

「図体ばかりが大きくなった子供みたいな奴だ。」
「ガブ・・・ラス・・・・・・・・・・・・?」
「随分のぼせ上がっていた様だな。冷めたか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

慌てて顔を上げれば、そこにはまるで悪戯が成功した子供の様な顔があって、ゴルベーザは途方に暮れた末に溜息を吐いた。
確かに目は覚めた気がする。
ゴルベーザはガブラスから離れた。

「------------------すまなかった。」
「自分一人で抱え込むのも結構だがな、堪え切れんのならば吐き出せ。」

弱音を一切吐かない男はそう言って、鼻で嗤った。

「皆、好きに生きている。お前一人だけが何もかも我慢せねばならん理由などあるまい。」
「・・・・・・・・・・・・私はお前を傷付ける。先程掴んだ腕も、内出血を起こした。」
「そうだな。正直な話、握り潰されるかと思った。だがな、内出血なんて珍しい怪我では無いし、すぐに治る。それしきでガタガタ騒ぐな。」
「ガタガタとは・・・・・・・・。」

随分と男らしい(ガブラスを女々しいと思った事も無いが)御言葉に、ゴルベーザは笑ってしまった。
見ればガブラスも目を細めて笑っていた。

「ガブラス、私は」
「お前の好きにしたら良い。」
「!」

ゴルベーザの言葉を遮ったガブラスは、平然と言ってのけた。
ゴルベーザは呆気に取られた。

「こうもちょくちょく暴走されては俺も面倒だ。無駄に我慢をするな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「それで?何を我慢していたんだ?」

よもや、当の本人に真っ向から問われるとは思わなかった。
ゴルベーザは頭が真っ白になって、呆然とガブラスを見下ろした。
そしてガブラスの腕をちらりと見やって、ぼそりと呟いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・お前に触れたい。」
「触れれば良いだろう。威嚇したりしないぞ?」

そう言って、ガブラスはゴルベーザの怪我をしていない方の手を取って、胸に当てた。
もう、ゴルベーザには何をどうしたら良いか分からない。
途方に暮れた気分だった。

「?・・・・・・・・・・・・・俺、何か間違えたか?」
「いや・・・・・・額面通り受け取れば、そうなのだろうな・・・・・・・・。」

そうだった。
ガブラスは、そう言う男だった。
分かっていた筈だったのに、どうして忘れていたのだろう。

ゴルベーザは、怪我をした指を動かさない様に気を付けながら、ガブラスの顎に指先を当てた。
少し持ち上げると、ガブラスは不思議そうにゴルベーザを見上げている。

「赦したのはお前だぞ。」
「?」

小さく笑って、ゴルベーザはガブラスにキスをした。


唐突に、「青イ鳥2」は1話1キスな話を書きたいと思い立ちました。
武人にしてもらう?魔人が頑張って自分からする?
そんな感じで。

以前も書きましたが、魔人はですね、武人を傷付けたくないとか、武人を気遣っている感じの描写ですが、違います。
実際の所は、傷付ける事で嫌われるのが怖いんです。嫌われたくないんです。
愛し方が分からない。けど、愛されたい。

騎士との接し方も魔人としては四苦八苦しているのですが、騎士も兄ラブだから問題無いです兄さん。

魔人も武人も早くに両親を亡くしていますが、少なくとも十七歳頃まで母親と共に暮らしていた武人とは違って、魔人は十歳で父親、母親を相次いで失っています。
だから、子供-------------生まれてから親離れするまでの間、目一杯愛されて育った武人とはちょっと違うんだと思います。


武人「・・・・・・・・・・・びっくりした。」

魔人「そんな顔をしていたな。・・・・・・・・私が告白したのを忘れていたのか?」

武人「覚えていたぞ?ただ、その後何も無いから、そう言うものだと思っていた。」

魔人「・・・・・・・・・そうか。」




メリクリPageTop炬燵争奪戦

Comment

Commentの投稿

 管理人だけに表示する

TrackBack

http://gamecomic.blog27.fc2.com/tb.php/2473-4fb93a24

プロフィール

高槻幽炎

Author:高槻幽炎
声フェチでオッサン好きのヘタレ。
ビバガブラスw

カレンダー

10 | 2019/11 | 12
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリ
月別アーカイブ
最新トラックバック
最新コメント
最新記事
ブロとも申請フォーム
QRコード

QR

リンク
投票所
RSSリンクの表示
検索フォーム