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昏黒の夢<7>

数日後。

鍵はかけませんが、若干スプラッタな描写があるので苦手な方は閲覧注意。














「本日の市街地の視察ですが、延期しました。」
「何故?」
「不穏な噂があります。御身に万一の事があっては------------」

ヴェインが立ち上がった事に気を取られたのだろう。
不意に言葉を止めたガブラスは、見下ろしていた報告書から顔を上げた。

「延期の必要は無い。」
「--------------は?」
「視察に出る。支度せよ。」
「ヴェイン様!?」

さっさと机の上を片付け始めたヴェインに、ガブラスは慌てた。

「お待ち下さいヴェイン様。所詮は噂と高を括っては」
「ならば却って好都合ではないか。私が死ねばラーサーが正式な皇帝となって、ラーサー派は万々歳だ。卿も嬉しかろう?」
「!!」

半ば笑いながら言うと、ガブラスは一瞬言葉を失ったが、すぐさま表情を引き締めた。

「------------------------分かりました。私とベルガが同行します。」
「独りでも良い位だ。下手に警護を付けては私を狙う者もやりにくかろう?」
「いいえ、一緒に参ります。失礼します。」

からかうヴェインにガブラスは真面目に応じて、頭を下げると退室した。
何を考えているのかは知れないが、少なくとも機嫌は損ねた様だ。
最後の書類をしまったヴェインは、皮肉な笑みを浮かべた。


市街地は良く晴れていた。
周囲を見回せばそこここに帝国兵やらジャッジやらが立っていて、ヴェインが視察を決行したから急遽数を増やしたのだろうと簡単に予想が付いた。
ヴェインの両隣を歩くガブラスとベルガもピリピリしている。
以前から一貫してヴェイン派のベルガは兎も角、ラーサー派と名高いガブラスまでもが神経質になる理由が分からなかった。
特に最近のヴェインの所業を思い返せば、ガブラスこそがヴェインに殺意を抱いて然るべき仕打ちばかりをしたと言うのに、それでも己の職務に忠実であろうとしている。

ヴェインの、執務室での言葉は本音だった。
己が死ねば、惜しむ者より喜ぶ者の数の方が多いだろう。

ヴェインは小さく笑った。
もう、どうでも良かった。
何でも手に入れられる地位に生まれながら、真に望んだものは何一つ掴めず、ただ徒(いたずら)に年ばかりを重ねて来た。
只管にソリドールの為、アルケイディア帝国の為にと生きて来た意義を、ここに来て見失うとは思わなかったが、心に空いた空洞を埋める術も知らず、洞(うろ)はどんどんその闇を広げ続け、いずれヴェイン自身を飲み込む程に大きくなるのだろうと分かっているのに、止める事も出来ない------------------

「ベルガ、ヴェイン様を!!」
「おう!!」
「!?」

ヴェインを現実に引き戻したのは、ガブラスの緊迫した声だった。
甲高い金属音がして、カオスブレイドが矢を叩き落としたのだと知れた時には、ヴェインはベルガに引き摺られる様に走っていた。
逃げ惑う市民達の悲鳴を聞きながら、ガブラスはヴェインを隠す様に並走して、また飛んで来た矢を払い落す。
ジャッジマスターともなるとヒュム離れした技を体得できるのか、それともそこまで腕を上げねばジャッジマスターになれないのか、ヴェインが他人事の様な疑問を抱いた所で、何かに蹴躓いた。
余所見をしながら走ったのが悪かった様だ。

「!!」
「「ヴェイン様!!」」

ガブラスとベルガの声が重なった。
帝国兵やジャッジ達が駆け付けて来るのと、ヴェインを抱えたベルガが建物と建物の間に飛び込むのと、地面を蹴ったガブラスが身を呈してヴェインを庇うのと、そしてその腕に矢が突き刺さるのと。
何故かヴェインはスローモーションでも見ているかの様に全て把握していた。

「ガブラス!」
「手出し無用!!ヴェイン様を!!」

ベルガに怒鳴り返したガブラスの脚に、もう一本矢が刺さる。
腕の矢を引き抜いたガブラスは、次の一矢を斬り落とした。
次々矢が飛んで来る方角を睨み付けた横顔は厳しく、周囲のジャッジや帝国兵達にヴェインの警護と、”犯人達”の確保を命じてから、ガブラスはがくりと地面に膝を付いた。

「ガブラス様!!ぐあっ!」

悲鳴じみた叫び声を上げた局員が、ガブラスを支えようと駆け寄って、腹を射たれて倒れた。
局員を一瞥したガブラスの肩にまた矢が刺さって、その頃にはガブラスの足下には血溜まりが出来始めていた。

ヴェインは、覆い被さる様に守ろうとしているベルガの肩越しに、只その光景を見つめていた。
穏やかな日差しの中で、稀代のジャッジマスターはゆっくりと空を仰いだ。
血に塗れた両手を天に差し伸べて、それはまるで祈りを捧げているかの様で。
それとも願いを託したのだろうか?
だとしたら、何を祈り、何を願ったのだろう?

その手の間を矢が擦り抜けた時も、ヴェインは見つめ続けていた。



「ま、馬鹿が揃っていたのでしょうね。ヴェイン様を仕留め損ねた時点でさっさと逃げれば良かったのに、いつまでもガブラスに腹いせしているから全員根こそぎです。」
「そうか。」

軽い調子で報告をしに来たベルガも、腕に軽い傷を負った。
それでも仕事をする上では差支えが無いらしく、慌てふためく局員達を余所に、何事も無かったかのように復帰した。

「背後関係も洗い出しました。元老院が一枚噛んでいますね。」
「それは好都合だ。」
「はい?」
「無理に外に出た事に関して小言を言われずに済む。」

安堵の息を吐いたヴェインの言葉に、ベルガは吹き出した。

「そうですね、それが一番面倒ですからね。ですが、俺は言わせて貰いますよ。もうこんな無茶は止めて下さい。閣下の身に何かあっては大事なんですからね?」
「悪かった。だが一網打尽に出来たのだから結果としては良かっただろう?」
「それは我々の都合です。ヴェイン様がこちらに合わせて頂く必要はありません。」
「分かった。もうやらんよ。」
「約束ですよ?」
「ああ。」

どうやらベルガは怒っている様だ。
それでもヴェインが頷くと気は済んだらしく、手にしていた報告書を渡して来た。

「あと、ガブラスは出血は多いですが命に別条は無い様です。」
「ほう?」
「奇跡的に急所は外れたみたいですね。まあ距離もありましたし、闇雲に射った所で当たりはしませんよ。」
「そうだな。後で見舞いに行く。」
「分かりました。伝えておきます。」

言うだけ言って気が済んだのか、ベルガはさっさと退室した。


ベルガさんが結構気さくな感じでヴェイン様と話していますが、この人は根っからのヴェイン派で、シドやヴェーネスとも一緒に話していたんじゃないかな、と勝手に思ったので、気心知れた仲と言う前提です。
ヴェイン様は一見厳格ですが、良く知った相手なら余程無礼な振る舞いをしなければ細かい事は気にしないと良いな・・・と言う妄想。

ところでこの話のガブ目線を書こうかどうか思案中でございます。
書くとしたら今から順次Upさせるか、ヴェイン様目線が終わってからにするかも悩み中。

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