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報告<2>

バハムート戦後でガブとドレが結婚後と言う捏造大爆発なお話の続き。
これで完結。











歩いて行くうちになだらかな丘が近づいてきた。
そこに見える幾つもの小さな影にドレイスは目をやる。

「------------------帝国へ来た当初、俺は生計を立てる事しか考えていなかった。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「親の故郷とは言え不慣れな土地で右も左も分からなかったが、母の病状が悪化して・・・只でさえ際どい生活に医療費が嵩んでな。」

ぽつぽつと話し出したガブラスに、ドレイスは黙って耳を傾けた。
ガブラスが胸の裡を語ってくれたのは初めてだった。
一言一句、全て聞き逃したく無かった。

「そんな頃、軍備増強で帝国軍が兵の大規模募集を始めて、俺には選択肢が無かった。」
「・・・・・・・・軍なら給与は安定しているし、保証もある程度つくからな。」
「軍に入ると報告した時、母は泣いたよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

ドレイスはガブラスの母親を知らない。
ガブラスを本格的に意識し始めた頃には既に他界していたのだ。

だが、ドレイスにはガブラスの母親の気持ちが痛いほど分かった。
祖国を滅ぼされて間もないのに、その滅ぼした国に仕えなければならない。
自分が病んだばかりに。自分が無力なばかりに----------------

これがドレイス自身の事だったら自害していたかもしれない。
だがガブラスの母親はそれすら許されなかった。
己が死ねば息子は天涯孤独の身となってしまうのだ。
生き続ける苦痛。死を選ぶ事は出来ず、だが病は身を侵し続ける。

ドレイスは唇を噛み締めた。
なんてひどい話だろう。
彼らをそこまで追い込んだのは、他ならぬ帝国なのだ。
己の生まれ育った国なのだ---------------------


「タイミングが良かったのだろうな。軍に入ってすぐ演武会があって陛下の御眼に留まって-----------」

その後の話は大体ではあるがドレイスも知っている。
グラミス帝の意向でアカデミーに入学したガブラスは、見る間に頭角を現して卒業する頃には九局への入局が決まっていた。
当時、帝国中の話題になる程の大抜擢だった。
どうやって外民出身のガブラスがグラミス帝に取り入ったのか、口さがない者達は下世話な想像をしては嫉妬や羨望を撒き散らしていたが、そうではない事が知られるまで然程時は要さなかった。
それほどまでにガブラスと言う男は格が違った。


「実は局へ入った時、隙を見付けてグラミス様を暗殺してやろうと思っていた。」
「え!?」

爆弾発言にドレイスの声が裏返る。
ガブラスは苦笑していた。

「だが中々機会が無くてな。とは言えここまで引き立てて下さったのも陛下だし、もうどうでも良いかな。」
「ガブラス・・・・・・・。」
「-------------------と言う結論が出るまで十九年かかった。」
「長いな。」
「長かったとも。」
「あはは・・・」

思わずドレイスは笑ってしまって、ガブラスを見上げるとガブラスも笑っていた。

互いの笑いが収まった頃、ガブラスが立ち止まった。
小さい影の数々は墓標だった。
そのうちの一基の前で、ガブラスは暫く無言でいた。

「ここは・・・・」
「騎士団墓地だ。父と----------------母の遺品が眠っている。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」

ガブラスはじっと古ぼけた墓標を見つめていた。
ガブラスの母親は帝国で死に、そして埋葬された。
遺品ぐらいしか持って来れなかったのだろう。

地面に膝を着いたドレイスは、静かに頭を垂れた。
そしてガブラスから花を受け取って、そっと供える。
この砂埃を被った一基の墓が、ガブラスの両親なのだ。

一つ大きく息を吐いたガブラスが、ドレイスの隣に膝を折った。

「俺、結婚しました。・・・報告が遅くなってすみませんでした。」
「それだけ?」
「え?」

実にあっさりとした言葉にドレイスは目を瞬いた。
見上げたガブラスは不思議そうにドレイスを見つめ返している。

「親に報告するのにそんな義務的なのか?」
「・・・確かに君の御両親の所へ伺った時は大騒ぎだったが・・・。」

大騒ぎどころの話ではない。
父親など頭の血管が切れるのではとドレイスが危ぶむほど怒り狂ったのだ。

「・・・・駄目だろうか?」
「うーん・・・まあ貴方がそれで良いと思うのなら良い・・・のかなあ。味気ないけれど。」

不安げに問われてもドレイスは何とも言い様がない。
寧ろ局内での貫禄溢れる姿とのギャップに愛らしさを見出しているくらいなのだ。
そして骨の髄まで惚れ込んでいる事に改めて気が付いて、一気に頬が熱くなった。

「どうした?」
「どっ・・・どうもしない!」

突然赤くなったドレイスに驚いたのだろう。
ガブラスが心配げに顔を覗き込んで来た。
ドレイスは必死で首を振って、古ぼけた墓標に向き直る。

「義父上様、義母上様、初めてお目にかかります。この先一生涯をかけて彼と共に生き、彼の為に在りたい所存であります。どうぞ、宜しくお願いします。」

我ながらなんと堅苦しい挨拶だろうか。
直接本人達を前にしたわけでもないのに、全身が震えるほど緊張していた。
それでも気が済むまで彼の両親に向き合ったドレイスは、勢いを付けて立ち上がった。



丘を下りる最中、不意にガブラスが足を留めた。
忘れ物でもしたのだろうか。
勢い付いた足は中々止まらず、数歩分先に行って立ち止まったドレイスは振り返った。

「ドレイス。」
「?」

名を呼ばれたものの、ガブラスは何も言わない。
ドレイスも特に促したりもしない。
全く喋らない訳ではないが、ガブラスは饒舌でも無い事は知っていた。

ガブラスは一度天を仰いで、何か考え込んで、そしてドレイスに視線を落とした。

「----------------------------妻になってくれてありがとう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

淡々とした、唐突な言葉。
ドレイスは頭が真っ白になった。

殆ど勢い任せで式まで上げてしまったが、ガブラスの気持ちを聞いた事は無かった。
己から問うのも怖かった。
拒まなかったのだから嫌われてはいないだろうとギースに慰められても、見えないガブラスの心にいつも不安を感じていた。
周囲に盛り上がられて、仕方がないからドレイスと結婚したのだとしたら、ドレイスはガブラスの人生に力ずくで割り込んだ事になる。
祖国を奪った国の女に、人生まで蹂躙されたと実は怒っているのではなかろうか。
ガブラスと共に暮らせる幸せに浮かれる一方、不安で心配で、眠れなくなった日が何度もあった。


強張った表情のまま黙り込んだドレイスに、ガブラスは驚いた様だった。
何か気の効いた台詞を返さなくてはならないと内心焦っている間に、頬を何かが伝った。
それが二粒三粒と数を増やすうちに、涙が流れているのだと言う事に気が付いた。

「ドレイス?どうした?」
「あれ・・・どうして私泣いて・・・おかしいな・・・何で・・・。」

言っている端から涙は次々溢れて来る。
どうしたら良いものか途方に暮れたらしいガブラスは、悩んだ末にハンカチで涙を拭いてくれた。
そっと触れてくれる優しさに、涙が更に数を増やす。

どうにも堪らなくなって、ドレイスは目の前の広い胸に飛び込んだ。
突然の行動に驚いたのか、それでも抱き留めてくれたガブラスが少しよろめく。

「!?」
「わ・・・私こそ!・・・・・・私こそ、妻にしてくれてありが--------------------」

言葉の途中でドレイスははたと気が付いた。
顔から血の気が引く。
抱き付いた時同様勢い良く離れたドレイスは、恐る恐るガブラスを見上げた末に引き攣った。

泣いたと思ったら今度は凍り付いた妻に、ガブラスはもうどうしたら良いか分からないらしい。
しかしドレイスはそれどころではなかった。
涙が吹っ飛ぶほどの衝撃だった。

「自己紹介していない!嘘だろう!?私とした事が・・・!」
「戻るか?」
「是---------------いや、やっぱり良い。」

振り返ったガブラスを制したドレイスは、既に遠退いている騎士団墓地に目をやった。

「また来れば良い。今度は義父上達のお好きなものを持って来よう。」
「-----------------------------そうか。そうだな。」

小さく笑んだ顔が優しくて柔らかくて、ドレイスはもう一度抱き付いた。


以前ガブラスとドレイスが結婚するまでの顛末を書いたのですが、ドレイス目線でしか書かなかったので、ガブラスの気持ちの描写は全くと言って良い程入れていませんでした。
敢えて入れなかったと言うのもありますが。

どこかで書きたいと思っていたので、アンケートに御協力頂いたのが良い機会となりました。
改めて御礼申し上げます。

蛇足ですが、ガブラスが結婚後もドレイスの事を名字で呼ぶのは(名前が分からないと言う裏事情はさて置いて)、名字で呼ぶのに慣れてしまったからです。
まあヨメもガブラスガブラス言ってるしね。
・・・と言う事で。
誰かドレイスの名前を教えて~(ノД`)

作品語り「報告」編PageTopひっこぬかーれて♪

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