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青イ鳥<4>

弟が来たよ!












セシルは予定していた時間より少し早く着いた。
ガブラスとは初対面であったから互いに自己紹介をして、近況を話しながら茶を飲んでいたが、カフェインがアルコールに変わるまで大した時間は要さなかった。
ゴルベーザもセシルも酒は嫌いでは無かったから、宴席は大層盛り上がった。

ガブラスは酒豪である。
何杯飲んでも顔色一つ変わらないし、足元が覚束無くなった姿も見た事が無い。
今も平然として残り少なくなった肴を追加しにキッチンに立っている。

「聞いていたのとイメージ違ったな。」
「何がだ?」
「兄さんの話だよ。」

さっぱり要領を得なくてゴルベーザが小さく首を傾げると、弟はくすくす笑い出した。
ゴルベーザは複雑な気分になった。
暫く見なかった間にセシルはまた一段と母親に面差が似て来た。
皮肉なものだ。
セシル自身は生後間もなくに母を失って、その顔を知らぬまま育ったと言うのに。


「兄さんが真面目で優しくて繊細だって言っていたから、もっと線の細い、儚い感じの人をイメージしていたけれど、全然違うんだもの。」
「!」

セシルが何を言っているのか漸く理解したゴルベーザは衝撃を受け、そして背後で調理をしている男を振り返って、その動揺ぶりを誤魔化すのにグラスを煽った。

「でも確かに真面目で優しい人だね。深入りはして来ないけれど良く気が付いてくれるし・・・兄さんが好きになる気持ち、わかるなあ。」
「ブーッ!!」
「何だ?」

にこやかに言われて、ゴルベーザは酒を吹いた。
尤も大して口に含んではいなかったからテーブルに飛沫が少し飛んだ程度だが、その音に驚いたらしいガブラスが振り返った。
ゴルベーザは咄嗟に首を振って何でも無い事をアピールする。
ガブラスは不思議そうに瞬いたが、結局調理台に向き直った。

「セシル!」
「なんでさ?僕は応援するよ?」
「そう言う問題では無い!」

押し殺したゴルベーザの声に、小首を傾げたセシルはにっこりと笑う。
その顔がまた愛らしくて、うっかり和んでしまいそうな己を叱咤しながらゴルベーザは深い溜息を吐いた。

「------------------------------そう言う問題では無いのだ。」
「ガブラスだって満更でも無いと思うけどなあ。」
「・・・・・・・・・・・・・。」

同じ言葉を繰り返したゴルベーザに、セシルは不服そうな顔をする。
ガブラスが満更でも無いのは当然だ。
ゴルベーザとは抱えている気持ちの種類が違うのだ。
男が男に抱くのは友情か精々が家族愛で、性愛では無いのだ。

「ね、兄さん?本人に聞いてみたらどうかな?」
「何を?」
「何って・・・ガブラスの気持ちさ。」
「は!?セシル!こら待て!」

言うなりガブラスの所へ行ってしまったセシルを捕まえようとゴルベーザは立ち上がりかけたが、
身軽な弟は鼻歌交じりにゴルベーザの手を擦り抜けた。
しかしセシルはすぐに戻って来た。
その隣では料理の盛られた皿を持ったガブラスが、中途半端な体勢のゴルベーザを不思議そうに見ている。

「何やっているんだ?」
「・・・・・いや・・・・・・・・・。」
「うーん、タイミングが悪かったかな。」

「悪かったかな」、では無い。
最悪である。
ゴルベーザは無言で弟を牽制した。
セシルは面白く無さそうに口を尖らせたが、すぐに気分を切り替えたのか、ガブラスの運んで来た料理を個々の取り皿に盛り分け始めた。

「美味しそうだね、兄さん。」
「・・・・・・・・・・。」
「どうした?喧嘩か?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」

無邪気な弟にゴルベーザは応じる気になれず、挙句ガブラスに心配をかけてしまった。
喧嘩では無いと言おうにも、焦ってどう説明したものか考えが浮かばない。
しかし何も言わなければ。何か言わなければ。

焦りばかりが募って、進退極まったゴルベーザを救ったのは、セシルの能天気な声だった。

「違うよ。こんなに優しい兄さん相手にどうやったら喧嘩が成立するのさ。」
「そうか。なら良いが。」

ガブラスは席には着かず、棚から新たなボトルを取り出して来た。

「まだ飲めるか?」
「勿論!」

嬉々として応じたセシルに、ガブラスは小さく笑う。
ゴルベーザはもう何か言う事を諦めた。

「ねえガブラス?聞いても良いかな?」
「答えられる範囲で良ければ。」
「簡単な質問だよ。ガブラスは兄さんの事、好き?」
「!!!」

今度は飲んでいる最中では無かった為、幸い酒は吹かなかった。
が、手にしていたグラスはテーブルに落としてしまった。
注いでもらったばかりの酒は盛大に零れて、テーブルを伝い落ちた挙句にゴルベーザの衣服を濡らした。

「何やっとるんだお前は。」
「す、すまん・・・。」
「大丈夫?」

何が大丈夫なものか。
すぐさまタオルを取って来てくれたガブラスに礼を述べてから、ゴルベーザは弟を睨みつけた。

「・・・・・・・・・着替えて来る。」
「行ってらっしゃい。」
「眠いのか?もう休んでも構わんぞ。」
「そう言う訳では・・・。」

言葉を濁しながら、ゴルベーザは慌てて着替えに行った。
寝るどころか下手に席を外そうものなら酒で勢い付いたセシルがある事無い事ガブラスに言うかもしれない。
それは不味い。大いに不味い。
仕事に行く時だってこんなに焦らないだろうと己で呆れるほどの勢いで着替えたゴルベーザは、何事も無い顔を取り繕ってリビングに戻った。

リビングではセシルが一人でのんびりツマミを食べていた。

「ガブラスは?」
「携帯かかってきてさ、面白くなさそうな顔して部屋に行っちゃった。」
「・・・・・・・・・・・・。」

ガブラスのプライベート用の携帯はテーブルに置いたままである。
ゴルベーザはガブラスの部屋を振り返った。
よもやこんな時間に仕事が入るとは思えないが、何か問題でも起きたのだろうか。
しかしガブラスはすぐに戻って来た。
携帯電話を見下ろしていたが、ゴルベーザの存在に気付くと、困った様に笑みを浮かべた。

「社長が戻られたそうだ。」
「------------------------------ああ、なるほど。」

それだけで大体分かった。
ガブラスとゴルベーザの勤める会社の社長は会長の夫人でもあって、大層美しく物腰も柔らかいが、強面の会長を尻に敷く猛者でもある。
会長が恐妻家だと言う点を差し引いても、あの会社の陰の実力者が社長であると言うのは社員であれば誰でも知っている事だった。

つまり会長の自由時間は終了し、彼の”自由時間中”の振る舞いが社長の耳に入ると言う事で、明日の会長室付近は荒れそうである。
会長付きの秘書であるガブラスが巻き込まれるのはゴルベーザにも容易く想像が付いた。
ガブラスの先程の表情は、予想と予感とその他諸々と葛藤した末の”困った様な笑み”だったわけだ。

「哀れが過ぎるから明日の家事は代わってやろう。」
「それは助かる。セシル、お前は良い兄を持ったな。」
「でしょう?僕の自慢なんだ。」

可愛い弟は、母親譲りの美しい笑顔を浮かべてグラスを一気に空けた。


今回のコンセプトは「綺麗で男らしい弟」でございます。
誰かに兄さんに発破かけて頂かないと話が進まない気がしてね!

魔人「(・・・・・・・そう言えばガブラスはセシルの問いに答えたのだろうか?だとしたらなんと?)

武人「どうした?」

魔人「!?ど・・・どどどどうもしない!なんでもない!今日も良い天気だな!」

武人「?ああ。そうだな。」






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